5X3には論理的な根拠がない(だいぶ横)

最近一部で盛り上がってる話題。
ま、低学年だし語順に元に式を構築するんだ、というのは教え方として正しいし、問題は単にかけられる側とかける側をひっくり返した子の回答をどう扱うか、ということなので、これは教師のポリシーだと思う。
正答としようが誤答としようがもっともらしい難癖は付けられる。まるで"規律か自由か"命題みたいになってて、実際そのアナロジーで語る人がかなり多い。つまりこれは政治の問題なのだ。
ただこれはひどい
404 Blog Not Found:3x5=5x3
単にひどいのだったらスルーすればいいのだが、それでも面白い指摘がいくつかあるので取り上げる。大本の議論とは無関係だよ。
算数における文章問題の扱いにこんなに躍起になる先生がいるのは、たぶん日本の子供たちの算数の能力が国際的に見て低下しているということと関係していて、日本の子供たちは特に文章問題が苦手なのだ。
これは国語力の低下が原因と考えられていて、要するにその文章が何を言っているかを把握し、それを数式の形で表現する能力が劣っているのだ、というのが通説。
文章を式に置き換えるとは、結局長文の要点を短く要約することと同じなので、これは国語の問題であるという指摘なら完全に正しい。ここでは計算能力など求められていない。
ちなみに算数の問題なのに国語力が問われるのがおかしいという主張も散見されるが、その考え方こそ問題。なぜ両者が別のものとして分けて学ばれねばならないと考えるのだろう?
国語/人文科学は数学と違って非論理的な学問であるとでも思っているのだろうか?
別のブログだが、そのような立場から以下のような意見がこの件に関してもっとも本質的な疑念だろう。

つまり、その数学の定義は、日本語に依存しなければ定義できないということなのだろうか。

本の虫: ようやく3x5と5x3に対するまともな意見が読めた

上記弾言エントリでは、除算の英語表現を例に、前後項の決め事は恣意的なものであり、数学において本質的ではないという。*1
したがって

「3x5≠5x3」のダメなところ、それは何より、それが教える側の都合の一方的な押しつけになっていることだ。あたかも「教える」の非可換性は絶対であるかの主張である。

404 Blog Not Found:3x5=5x3

英語で乗算はtimesを使う。3を5回、である。日本語と逆になるのは単に文法上の違いに過ぎない。
だが我々は日本語文法に則って論理を構築・展開するのだ。
英語と日本語に文法上の差異があったとして、両者の機能に本質的な差があるわけではない。
だからいずれの言語(あるいは数学)文法を使用するにせよ、それが恣意的であることは問題ではない。論理的であるということと、この恣意性は別に矛盾しない。
矛盾するのは、以下のような文章を日本語であるとした場合だ。

人間は動物である。
猫は動物である。
したがって人間は猫である。

これは論理的に間違っているのではなく、日本語文法として間違っている。
上のような論理体系を構築すること自体は可能だからだ。「日本語として」間違っているというのはそういう意味だ。
(人がこの種の間違いをする場面はしばしば見る。あるいは言葉遊びでよく用いられる。それはあくまで文法的な詐術で、論理的な錯誤と見えるのは単に論理が文法体系に依存しているからにすぎない)
だから本質的に恣意的だろうがそんなことはどうでもいい。良くないのは、ある体系において複数の文法が恣意的に混在することだ。英語の語順で日本語を話すことはできない。
英語は(/日本語は)論理的な言語じゃないからではない。文法が異なっているからだ。
ウチの子が一年生のとき、同じような算数の文章問題で以下のように立式し計算した。
当然誤答である。

3-9=6

計算を間違ったのではない。問題で問われていることを理解できなかったのでもない。
ただ文法上の間違いを犯したにすぎない。*2
だが文法上の間違いは、結果的に論理的な間違いである。
乗算記号の前後項が可換的なのは、単に可能であるという意味しかない。
だがまず3X5があり、その後に5X3もまた可能であるという順序は非可換である。
文法上の根拠があるのは3X5であり、5X3はそれを前提に可能であるというにすぎない。5X3にはそれ自体としては、文法上の、つまり論理的な根拠がない。
いわば乗算における可換性とは、法ではなく規則・政令のようなものだ。同列に語れない。

ほとんどの子は、自ら正解を探すのではなく、教師に答えを求めるようになる。それは教師に答え合わせしてもらわないと安心できないところまで続く。

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少なくとも文法に関しては自分の脳内で正解を探すのではなく、「教師」系列の人に答えを求める必要がある。論理的な誤りを犯しかねないし、なによりコミュニケーションが取れなくなる。
文章問題が苦手ということは、日本語文法を正確に理解していないからだと思われ、それは論理的な思考ができていない可能性を示唆している。

「そんなの教わってません」で済むんなら大人はいらんのだよ、若いの。

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結論部分は異論ないけど、そもそもこれは初等教育の問題なんだよね。。。

*1:つか分数の英語表現。ちなみに除算はdevideで、英語文法的にも数学的にも非可換。

*2:アラビア語のように右から左へ読み進めれば完全に正解だぞ息子よ! そしてそのような書式で完全にすべての数学を記述できるぞ!
でも数学の書式にアラビア語の書式を混在できないのよね。これは不当なことと学校にネジ込むべきだったか?