不景気アイドル

秋元がインドネシアAKB48姉妹グループみたいのを作ってると。
ジャカルタだからJKT48と。ほー。*1
その地域は言うまでもなく韓流真っ只中のはずなので、なかなか大変だろうが、AKBと同じ手法で育てるとテレビで言ってた。
秋元が韓流/K-POPをそんなに意識しているとも思えないが、こうなると周囲はどうしてもそのように見る。
秋元によれば、K-POPの魅力は「完成度の高いパフォーマンス」で、日本型アイドルはこの点でK-POPアイドルに対抗できない。
K-POPアイドルはパッと一目見てその魅力がわかる。美男美女揃いで歌がうまくダンスが洗練されているからだ。このわかりやすさが国境を越えて広がる際の武器になってる。
JKT48はその路線ではなく、素人同然の状態でデビューし、ファンの目の前で上達・成長していく過程を見せることで、共感と愛着を持ってもらおうとしている。AKBと同じ手で、応援しがいのあるアイドルっつーことだ。
だからJKTは地元の女の子を選んでいる。
秋元すごいなーと思ったのはそこで、例えば台湾でAKB48は大人気だが、(韓国の)少女時代はそれ以上に人気がある。
台湾のファンはAKB48の「成長過程」を共有などしておらず、単に日本の人気アイドルとして見ている。そのような見られ方をしてしまうと完成度の高い少女時代に対して分が悪い。
なら地域密着だ、っつーのはわかる考え方である。
それでも「日本型アイドル」の競争力に個人的な不安を感じないでもない。
秋元的な、あるいは日本的なアイドルのフォーマットが、現地のマインドと合致しないのではないかという気がするのだ。
端的に言ってしまうと、AKB48型アイドルは「不景気な社会のアイドル像」という気がする。
そして東南アジア地域は現在世界有数の成長セクターなのだ。
現在のAKB48が、若い男子の自信の無さを反映したものだということは異論が無いだろう。クラスで3番目くらいとか、歌も踊りもヘタとか、執拗なまでの無力さの強調と強い個性の忌避、完成・成熟を遅延させる仕組みは、要するにヘタレ男子が劣等感を持たなくて済むような設定である。
きっと日本男子は、ここ20年くらいで顕在化した世界的な競争を勝ち抜く自信をなくしていて、AKBはそんな男子の無力感と脆弱な自尊心をうまーく掬おうとしている。*2
「成長する過程」とか言ってるが、彼女たちはアニメキャラがいつまでも成長しないのと同じように「成長」なんてしないだろう。ただ年齢が増え、何をできるようになる訳でもなく「卒業」していく。
JKT48もそうなるだろうか?
でも東アジアの経済成長を続ける社会で、自分の未来を確信しているような男子が、そんなJKTにどの程度かまってくれるだろうか?
経済成長率が7%とかの国の男子が、最初っからクラスで3番目の女子を狙うか?
株価上昇率が利子率を上回るような国で、素人が成長していくプロセスをじっと待つほどヒマか?
資産を手元に置いといたらドンドン価値が劣化していく社会で、アイドルの成長を待つなんてことができるだろうか?
そこでは時間はカネより価値がある。こうしている間にも株価は上がり、給与も上がってるのだ。
物価上昇と同じスピードで男子の(たぶん女子も)自信や自尊心も増大している。
ただ待つだけでは損をする。
カネを払って時間を買うことが合理的な社会では、過程をスキップし、最初から完成されたものを欲するだろう。バブルん時の日本だってそうだったよね。*3
何のことはない、それら地域で今韓流がブームであるとすれば、それは単に韓国もまたそのような経済成長的マインドを共有しているからにすぎないのかもしれない。
少女時代や超新星のパフォーマンスは、東南アジアの若者とそんな「日々高まりゆく自信」を共有しているわけだ。
ただ「韓流」の原因が、単に歌とかダンスとかの技能に還元できないものであるとするなら、それは却って厄介かもしれない。
単にいいモノを作れば売れるというほど単純ではない、日本のモノ造りがハマった罠でもあるからだ。
だからひょっとしたらJKT48は、AKB48のようではなく、K-POPガールズグループのようにクールでセクシーでガーリーでビッチなイメージで出来上がってくる可能性もあるわけだな(そんなのが48人もいるグループって、、、)。
多分秋元はそういう余地を残しているだろう。それならやはり大したものだと思う。

*1:ググったら台湾にもいるのか。

*2:個人的には非常に自信をもった若い日本人も増えていると感じる。そしてそんな人はAKBにハマらないだろう。

*3:無論どんな時代にも自信の無い男子は一定数いるし、そんな彼らのためのアイドルも常に一定数存在するだろうが