日本語の乱れではなくカイゼン

単に語呂の問題なんだよなこれ。
気になる店員の言葉:MORI LOG ACADEMY

 「お買い上げの皆様に、もれなくクーポン券の方をお渡ししております」というのも耳にする。なんだろう、この「方」というのは。「サービスカウンタの方までお越し下さい」の「方」も、なんだか曖昧で違和感がある。

日本語の乱れ、とかいうより、これは単に語呂がいいかどうかの問題の気がする。
"○○ - の方まで - お越しください"
だと文末が5音-7音になり収まりがいいというだけ。よくある"○○ - からお預かり - いたします"も、"から"があるから七五調になる。("クーポン券の方"は微妙かな・・・)
そのほうが日本語の(日本人の身体の?)リズムに合っているので言いやすいし、聞きやすい。
こんな定型的/儀礼的なやり取りは細かな意味よりその形式が大事なので、文法的な正しさよりも審美的な観点から語が選ばれる傾向があるように思う(伝達される意味は単純で決まりきったものだからだ)。
その意味ではこれは候文のようなものだと思ってよく、候文において「美文家」というのがいたように、内容ではなく形式の美しさが説得力の源泉になっている。要するに語呂がいいと聞く方もわかったような気になるのだ。
これは一般的な(複雑な)コミュニケーションでは誤解のモトだろうが、このような定型的なやり取りではむしろ聞く側の納得感を向上させることができる。
どうせ誤解の余地の無いメッセージなのだから、これも聞く側への気配りだと言えなくもないが、まあ話すほうのストレスが少なくすむということだろう。
そういった意味では、都市部のファーストフードやスーパーマーケットのように、大量の顧客に対して定型的な応答を機械的に長時間繰り返す、というストレスフルな職場環境が生んだ語法かもね、という気はする。
非人間化された流れ作業を、人間がよりスムーズにミス無く進めるためのカイゼン活動の結果かも。