そんなこと聞くボケはいないが、答えるボケはいる

これ、この部分だけを取り出せば正論とかなんとか言う人がいるのだが、これを正論と言っちゃイカンだろ。
麻生首相:「金ないなら結婚しない方がいい」 少子化関連で質問され
退屈な正論を言うなら結婚は2人の合意に基づいていればいいのであって、たとえ貧乏でもいいじゃないの幸せならば。それは本人達の問題だ。
だがこれが当人達の問題を超えている(政治家に持ち込まれる)部分があることが問題なわけだ。
それは結婚(出産・育児を含むだろう)に、負担しきれない程のカネがかかるということであって、この好ましくない状況を、麻生の発言を「正論」と言うことで正当化してしまうことになる。
実際、カネの有無が結婚すべき・すべきでないという話につながるのはおかしい。そりゃ結婚する2人にはカネはあったほうがいいが、それは彼女いない歴=年齢の非モテ童貞にとっても同じなのであって、それだけの意味でしかない。
・・・のだが、実は麻生はそんなことは言っていない。彼が言っているのは

「金がねえなら結婚しない方がいい。うかつにそんなことしない方がいい。おれは金はない方じゃなかった。だけど結婚は遅かった。稼ぎが全然なくて尊敬の対象になるかというと、なかなか難しい」

http://www.asahi.com/politics/update/0824/TKY200908240419.html

要するに、彼は結婚する若い男女の信頼関係について言っている。
つか、質問者が男性なので、(カネが無いと)女性に尊敬されないよ、と言っているのだろうが、余計なお世話である。オマエ政治家だろ? 身の上相談されてんじゃないんだよ。
どこのボケが「稼ぎが悪いのでいつか彼女に嫌われるのではないかと心配です」なんて公開の場で一国の首相に聞くんだよ。
ちなみに、いつか没落しつつある経済大国のリーダーとしてでなくそう問われたなら、結婚しないほうがいい、ではなく「二人で懸命に働け」ぐらい言えよ>麻生。
若者にカネがなく結婚できないという現状は、別に麻生のせいではない。
ただ彼が何を問われているのか理解できなかったというのはどういうことなのだろう? これは現在の日本の中心的な政治課題のひとつのはずなのだが。
よくある政治家的な答弁をしたくなかったということはあるだろうが、彼の中で、少子化・若年層の貧困・非正規雇用などが密接に関連した問題として把握されていないのではないか、と思う時がある(彼に限らず、特に保守系議員に感じる)。
特に今回の件について、彼は少子化と貧困とを関連して語れていない。質問者の意図はまさにそこにあったわけだが、彼が語るのは(保守的かもしれない彼の男女観/家族観に基づく)男女の関係についてだけだ。
男女の信頼の基礎に経済があると言っているようだが、同時に自分はカネはあっても結婚は遅かったとも言っている。要するに彼は何を言っているのだろう? それはカネの問題じゃないと言っているのか?*1
彼は、金が無くて結婚できない、という状況が単に理解できないのだろう。金が無いということ自体を理解できないのかもしれない。
それは例えば、彼の発言の背後にある、女性の男性への信頼/愛情の源泉は彼の所得である、という身も蓋も無い考え方と関連するかもしれない。経済力が無いと女性の尊敬を得られず結婚できない、という理路でしか両者を結び付けられなかったのかな。
だが社会関係/人間関係の基盤はカネである、というのは「正論」かもしれないが、それが無いなら関係を放棄・断念しろ、というのはいかなる水準でも正論ではない。
今回麻生はそんなことは言っていないが(彼は、カネが無きゃ女は寄ってこないと言っただけだ)、そのような発言として流通し、あろうことがそれを「正論」という人たちが出てきてしまうわけだ。
でも今回彼は、恋に悩める若者の相談に乗っただけのようだ。回答は、苦しいならあきらめれば? という何も解決しないロクでもないものだったが。
追記:
発言のテープ起こし?してる人いた。これが全部かはわからないけど、徹頭徹尾男女の信頼関係についてしか語っていない。
首相「金ないのに結婚するな」テープ起こし:雑種路線でいこう

*1:「(金が)あるからする、ないからしない、というもんでもない。人それぞれだと思う」とも言っている。その通りだが、質問を聞いてる?