鳩山は「バカ」なのではなく「アホ」

ポルナレフならこう言うだろうか。
「意味不明だとか無節操だとか そんなチャチなものじゃ 断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ」
実際、この「茶番劇」における鳩山元首相の一連の発言・行動はほとんど常識的な理解を超えている。彼が何を言っても「お前が言うな」と返せてしまう、このボケ役振りは狙ってやってるなら天才である。
この一連の、菅と岡田と小沢と鳩山のコントを見ていて思ったのは、民主党という集まりの中で、鳩山はいわゆる(関西/大阪で言うところの)「アホ」なんだ、ということだ。
それはたとえば松竹新喜劇藤山寛美に似ている。
内面には素朴というより幼稚な価値観/正義感のみを持ち、周囲で起こっていることをおよそ理解していない。
おそらく単純な論理や物事の因果関係を把握できず、事物は個別に無関係に並んでいるだけだ。個々の事物に対し価値判断はあるようだが、文脈や意味を解さないため表面的な言葉尻に単純に反応し、結果的に矛盾した言動になる。
だが彼がより「アホ」的なのは、彼のアホさ故に結果的に周囲の問題を消去してしまうからだ。
彼は小沢と意気投合し、同時に反対の立場の菅とも同意できてしまう。
こんな不可能が可能なのは、彼が要するに小沢や菅の言っていることを理解していないからだ。小沢が「辞任させなければならない」と言い、菅が「辞任する」と言ったら、彼にとっては全てが解決である。両者ともに一定の条件や留保・含意があったはずだが、それを解さないため、もともとあった両者の差異/問題がなかったことになっている。
菅と話して彼は拍子抜けしたはずだ。「何だ、みんな同じことを考えていたんじゃないか」
彼にとって2日の代議士会での「団結の呼びかけ」は感動的なものだったはずだw
この普通には意味不明な彼の感覚が、現実に奇矯な言葉や行動になって表現されてしまうと、結局、相変わらず存在している小沢と菅の対立を隠蔽してしまう。
双方の損得勘定が「アホ」により開陳された非論理を受け入れてしまう。それは普通の頭では到達できなかった合意の地点だ。
両者の利害は対立していたのだ。が、アホの一振りにより状況が不可解に反転し、双方ともに自分を納得させる言葉を見つけてしまう。
素朴で善良?な本音が出てしまうと言ってもいい。双方とも根本的には党を割りたくはないのだ。本音の上に構築された個別的な利害や論理の対立が、鳩山の"非理解力"により脱臼させられてしまう。
だから一連の騒動は、茶番劇というより新喜劇だったと言った方がいい。

現実には勝者と敗者があり、菅は勝者だろう。鳩山は単に転がされただけに見える。
だが、最初から異なる勢力の寄り合い所帯にすぎなかった民主党が、まがりなりにもまだひとつであるのは、鳩山という「アホ」のお蔭なのかもしれない。
実際、2日の菅鳩の会談がなければ今頃民主党は分裂している。
「バカ」は壁を作るらしいが、「アホ」は壁をグズグズに溶融させるようだ。「アホ」がいるおかげで対立や差異が全く解消しないにもかかわらず消去されている。
だから多分、民主党を維持しているのは、鳩山の血筋や資金力というより、彼が「アホ」だということだ。*1
今鳩山は死ぬほど悔しがっているが、これもお約束のフィナーレ。彼はその意味だって本当はわかっていないし、会場は拍手と暖かい(!)笑いに包まれている。そして来週また新喜劇が上演されるように、民主党内のゴタゴタも同じように続くだろう。実は何も変わっていないのだ。

余談だが、一連の新喜劇での谷垣の出来はひどいものだった。不信任案提出という状況にあってさえ具体的な何事も口にできず、舞台そでに突っ立ってただそこにいるだけだった。彼の披露したネタで印象に残ったものが何かあったか?
菅を擁護するわけではないが、もし現在この非常時にこのような人物が総理であったら、、、、と思うと正直背筋が冷たい。

*1:トリックスター」とか気の利いた言葉を用いてもよかったのだが、まあ。